密教占星術には「六害宿法」という占法がありますが、これは人間の節を司るものであるとして六つの宿を定めているのです。この宿に日月火水木金土の七曜の一つ或いは複数が巡行してきていれば、その七曜に六宿が害されていることになるので「六害宿」というのです。
 六害宿の六宿というのは「命宿」「意宿」「事宿」「克宿」「聚宿」「同宿」の六つです。宿曜経には「宿」というものがたくさん出てきて紛らわしいので、「宿」を省略して単に「六害」や命・意・事・克・聚・同として記すことにします。つまり、六害の命とか六害の事などと表すのです。「命」は生日に応じる宿、「意」は命から数えて第四の宿、「事」は命から数えて第十に当たる宿、「克」は命から数えて第十三に当たる宿、「聚」は命から数えて第十六に当たる宿、「同」は命から数えて第二十に当たる宿です。

 例えば本命宿が昴宿の人は、命は昴宿、意は参宿、事は翼宿、克は亢宿、聚は心宿、同は女宿が相当します。
 
 「命」は身体、生命を表します。
 この命の宿に七曜が巡ってくると生命身体に厄を受けることになるのです。つまり、金銭を無駄遣いしたり、身体に負担を掛けすぎるようなことをしてしまいやすいのです。その為に、暫くすると金銭が不如意になったり健康面に悪影響が出てくるようなことになったりしやすいのです。もとより、命が害される期間に於いてのみ金銭面や健康面に害があるということではない。それまでの所業の結果がこの命が害される時に現れたり、また、この期間の所業が後になって現れたりすることも多いのです。「命」が害される時には「無理をしない」ということを心掛けなければならないのです。

 「意」は意志であり、愁苦などを主どります。
 この意の宿が七曜に害されると所願、画策などの心志を基とすることに害があるのです。つまり、愁い苦しむことが多くなり、心神憂愁して煩悶し、困窮逼脳することになるのです。また、願い事や計画事に害が生じたり不結果に向かうようになるのです。
 意が害される時に計画事を実施に移すと、その計画事が将来に於いて不結果に終わりやすいのです。ただ、この期間に計画事を構想画策したり練り上げたりするのには何ら差し支えは無いのです。
 また、意が害される期間に満願を迎えるような願掛けはしないのが賢明です。何故なら、願が結実しなくなる虞が強いからです。

 「事」は事業です。
 この事の宿に七曜が巡ってくると所作、興業など身体の活動を基とする事に害があるのです。つまり、事業についての災いや責めが生じるのです。身体を動かして為すことが不都合に已って災いが生起して、その責めを負うことになるのです。何らかの原因で物事が騒然として乱れてしまい、而も変化し続けるので収集することができなくなり、更にそれを押し鎮めようと画策しても、その効果が現れてこず、結果としてその責めを負うことになりやすいのです。
 事が害される時は、それまでの業績が正しく評価されないことになりやすく、その上に責めを負わされることにもなりやすいのです。取り繕おうとして軽々に動く過ぎるとますます苦境に陥ることになるのです。
 また、事が害される時に無理をして新規に物事を始めると、後々に不都合になりやすいのです。事が害される時期を予め識ってから着手するとうことが肝要です。

 「克」は勝であり、優であり、官位などの権勢を主どります。
 この克の宿に七曜が巡り来ると他を屈服して益があることに害を受けるのです。つまり、財を失い地位や名誉を失って勢力が挫けてしまい、その為に金銭などが耗減していくことになるのです。
 また、相手を屈服して利を得る事に害があるので、争論や訴訟のことは不利になるのです。
 克が害される時は評価が覆ってしまって物事を担うことができなくなり、それ故に役職を追われたりすることにもなりやすいのです。
 また、克が害される時は、争事には極めて不利です。この克が害される時期に争い事を提起してはならず。受けてもならないのです。

 「聚」は物を集積することを表します。
 この聚の宿に七曜が巡り来れば、蓄積して利を得ることに害を生じることになるのです。つまり、財物を亡失し、これを防ごうとして行き詰まって苦しみ、さらに責めを負わされて自由を束縛されるような苦しみを味わうことになるのです。また、愛する家族や親族と別れる憂いや苦しみを味わうことにもなるのです。
 聚が害される時は、蓄財が減るようなことが起きやすい。また、築き上げた信用を台無しにしてしまうような愚かな言動を為すこともあります。そうして、竟には身の置き所の無いほど困窮し悶え苦しむことにもなりやすいのです。
 また、聚が害される時は、家族などと離れて暮らさなければならないような事態が起きやすいので冷静に対応することが肝要です。

 「同」は合同であり眷属です。
 この同の宿に七曜が巡り来れば、和合協力のことに害があり、身内眷属に苦情を生じることになるのです。つまり、親しい者と離ればなれになる不安に駆られたり、財物の散失損耗があるのです。大勢の者が心を合わせて心を同じくして足並みを揃えねばならない時に、お互いの進む道が乖戻したりして、引いては家族の人数が減ったり、財物も損耗していくことにもなるのです。
 同が害される時は、皆が心を合わせることができないようなことになりやすく、それ故に物事が不結果に已る虞があるのです。また、家族の心が離ればなれになるようなことが起きやすい。同が害される時期を予知して、家族や仲間が心を合わせられるような手段を講じておくことが肝要です。


 本サイトには『今年の宿と曜』に二十八宿に七曜が巡る時期を載せていますので、お手数ですが本命宿から数えながら六害宿を見て、害される時期を把握してください。


 

 
紫星会
六害宿について